住所等変更登記の義務化について ― 令和8年4月1日施行。いま確認したい基本ポイント ―

令和8年4月1日から、不動産の所有者の氏名又は住所に変更があった場合には、その変更日から2年以内に変更の登記を行うことが法律上の義務となります。
この制度は、所有者と連絡が取れず土地の利用が滞る「所有者不明土地問題」が深刻化したことを受け、登記情報を最新の状態に保つために導入されるものです。国民に幅広く影響がある制度であることから、法務省は特設ページや通達により、制度の内容を分かりやすく公表しています。

参考URL:
法務省|住所等変更登記の義務化について
令和7年10月30日付け法務省民二第915号民事局長通達

目次

義務の内容と過料について

新しい制度では、不動産の登記名義人が転勤等による引っ越しや結婚等での氏の変更、法人の場合は本店移転や社名の変更などを行ったときには、変更後2年以内に住所変更登記を申請しなければならないと定められています。

正当な理由がないのに住所等変更登記の義務を怠ったときは、5万円以下の過料の適用対象となります

また、義務化の施行日前に住所等の変更が既に生じている場合でも、今回の制度の対象となります。
※ただし、施行日から2年間、すなわち令和10年3月31日までは猶予期間とされ、この期間内に変更登記を行えば過料の対象外とされています。

「職権による住所変更登記」という新しい仕組み

今回の義務化とあわせて、法務局が不動産所有者の負担を軽減するための仕組みとして、「登記官の職権による住所変更登記(スマート変更登記)」制度も導入されます。

住所が変わるたびに不動産の所有者情報もその都度変更登記を行うとなると、相当な手間がかかりますよね。
しかし、本制度をご利用いただくことで、将来の手続き負担を大幅に軽減できるほか、義務違反による過料リスクも未然に防ぐことができます。

法務省|スマート変更登記のご利用方法

この制度は、所有者(個人・法人)の側があらかじめ必要な情報(「検索用情報」又は「法人識別事項」)の申出を行えば、行政機関が保有する情報をもとに登記官が住所変更登記を自動的に行うというものです。

「検索用情報」とは?
氏名、氏名の振り仮名(日本の国籍を有しない者にあっては、ローマ字氏名)、住所、生年月日、メールアドレス。

「法人識別事項」とは?
①:会社法人等番号を有する法人・・・会社法人等番号
②:会社法人等番号を有しない外国法人・・・設立準拠法国
③:会社法人等番号を有しない②以外の法人・・・設立根拠法

個人の場合

【申出の方法】

■新たに所有権の登記名義人となる登記の申請をする際に、「検索用情報」を申請情報の内容として申し出ることが出来ます(同時申出)。
 (1) 所有権の保存の登記
 (2) 所有権の移転の登記
 (3) 合体による登記等
 (4) 所有権の更正の登記

令和7年4月21日より前に所有権の名義人となっている場合は、「検索用情報」の申出を単独で行うことで対応可能です。

・方法①:Webブラウザ上での申出。

「かんたん登記申請」のページから申出を行うことが可能です。

・方法②:書面で申出。

不動産を管轄する法務局に「検索用情報の申出書」を提出することとなります。

※管轄の異なる複数の不動産を所有している場合、その不動産のうちいすれかの不動産を管轄する法務局にまとめて申し出ることが可能です。

検索用情報の申出手続が完了した場合、申出のあったメールアドレス宛に通知メールが届きます。

【検索用情報の申出をした後の職権による住所等変更登記を実施するまでの流れ】

STEP
法務局が定期的に住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)に照会して住所等の変更の有無を確認
STEP
住所等に変更があった方に対し、住所等変更登記をしてよいか確認するメールを送信
STEP
住所等変更登記をしてよい旨の回答があった方について、住所等変更登記を実施

法人の場合

【申出の方法】

■新たに所有権の登記名義人となる登記の申請をする際に、「法人識別事項」を申請情報の内容として申し出ることが出来ます(同時申出)。
 (1) 所有権の保存の登記
 (2) 所有権の移転の登記
 (3) 合体による登記等
 (4) 所有権の更正の登記

令和7年4月1日より前に所有権の名義人となっている場合は、「法人識別事項」の申出を下記の方法で行うことで対応可能です。

・方法①:法人識別事項申出書を管轄法務局に書面で提出又はオンラインで送信(単独申出)。

・方法②:所有権の登記名義人の名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記の際に申出。

【法人識別事項の申出をした後の職権による住所等変更登記を実施するまでの流れ】

STEP
商業・法人登記上で住所等に変更(本店移転や商号変更など)があった都度、不動産登記のシステムに通知
STEP
上記通知を受けて、不動産登記上の住所等の変更登記

過料の手続きと「催告」について

住所変更登記を怠った場合にすぐ過料が科されるわけではなく、法務省通達(令和7年10月30日付け法務省民二第915号民事局長通達)では運用方法が明確に定められています。
まず登記官は、義務違反が疑われる不動産の登記名義人に対し、一定期間内に登記申請を行うよう催告を行います。この催告に応じて期限内に申請を行えば、その時点で義務違反は解消され、過料の手続きが開始されることはありません。

また、催告後に不動産の登記名義人から「正当な理由」が申し出られ、それが認められる場合にも過料は適用されません。

【正当な理由の例】
①:検索用情報の申出又は会社法人等番号の登記がされているが、登記官の職権による住所等変更登記の手続がされていない場合。
②:行政区画の変更等により所有権の登記名義人の住所に変更があった場合。
③:住所等変更登記の義務を負う者自身に重病等の事情がある場合。
④:住所等変更登記の義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合。
⑤:住所等変更登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合。

実務においてまず確認すべき点

制度の内容を踏まえると、まず行うべきことは 「自分の不動産の登記記録に記載された住所が、現在の住所と一致しているかどうか」 を確認することです。お近くの法務局にて、登記事項証明書を取得すればすぐに確認でき、住所が古いままになっている場合には、お早めの対応が望まれます。

過去に転居や改姓があったのに変更登記を行っていない場合には、令和10年3月31日までの猶予期間内に手続きを行えば過料の対象外となるため、早めの準備が必要です。
今後転居の予定がある方は、検索用情報の申出を済ませておくことで、住所変更登記が職権により簡便に行われる可能性があります。

法人が不動産を所有している場合には、会社法人等番号が不動産登記に記録されているか確認し、未記録であれば申出を行っておくことが重要です。この申出を終えておくことで、多くの不動産を保有されている法人にとっては、管理の手間が大きく軽減されます。

まとめ ― 今のうちに登記記録の確認を

住所変更登記の義務化は、すべての不動産所有者が登記情報を適切に管理することを目的とする重要な制度です。
複雑な制度に見えますが、まずは自身の不動産の登記住所を確認し、必要に応じて変更登記を行う、または検索用情報の申出を行うことが最初の一歩となります。

司法書士法人川岸事務所では、氏名、住所変更登記の申請だけでなく、検索用情報又は法人識別事項の単独申出手続などにも対応しております。本制度に関してご不明な点がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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