司法書士が解説!新設分割の法務手続きについて

目次

新設分割とは

新設分割とは、会社法上、「 一又は二以上の株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させること」と定義されています(会社法2条30号)。

新設分割を行うと、新会社が設立されると同時に、分割の対象とされた事業に関する権利義務が、新設分割会社(以下、「分割会社」という。)から新設分割設立会社(以下、「新設会社」という。)へ承継されます。つまり、「会社の設立」と「事業に関する権利義務の承継」が同時に行われる点が、新設分割の大きな特徴です。

なお、あらかじめ新会社を設立したうえで、その会社との間で吸収分割を行うことによっても、実質的には同様の法的効果を得ることができます。しかし、新設分割を用いる場合には、会社の設立手続と吸収分割手続が一体となって進められるため、手続全体が簡素化されているというメリットがあります。

新設分割は、以下のケースに利用されます。
① :事業部門の分社化・持株会社化
② :事業譲渡
③ :不採算部門の切離し・事業再生(第二会社方式)
④ :合弁事業の創設
⑤ :中小企業の事業承継対策

また、新設分割には、「分社型分割(物的分割)」と「分割型分割(人的分割)」の2つの類型があります。

■分社型分割(物的分割):分社型分割とは、分割会社が新設会社の株式を対価として受け取る分割です。この場合、分割会社が新設会社の株主となり、親会社(分割会社)と子会社(新設会社)の関係が生じます。
■分割型分割(人的分割):分割型分割とは、分割会社が新設会社の株式を受け取ったうえで、分割会社の株主に対し、その株式を剰余金の配当(または、全部取得条項付株式の活用)として交付する分割です。この場合、分割会社の株主が新設会社の株主となり、分割会社と新設会社は兄弟会社の関係となります。
※なお、会社法上は、旧商法時代と相違して、分社型分割(物的分割)のみが会社分割とされています。旧商法時代の人的分割は、現在の実務においては、「分社型分割+受領対価の分配」の2つの行為として整理することが出来ます。

新設分割に伴う一連の法務手続きは、経営者の方にとって非常に煩雑で見慣れない作業が伴います。
本コラムにおいては、新設分割の法務手続きと実務のポイントについて解説いたします。

新設分割の法務手続きの流れ

新設分割の一般的な法務手続きの流れは次のとおりです。
ここでは、主に中小企業(株式会社)の新設分割の法務手続きを想定しています。
※次の条件下でのスケジュールとなります。
 ・分割対価の全部が株式であること。
 ・分割会社では、種類株式・新株予約権を発行しておらず、登録株式質権者が存在しないこと。
 ・新設会社は、会計参与設置会社又は会計監査人設置会社ではないこと。
 ・共同新設分割(2以上の株式会社が共同してする新設分割)でないこと。
※下記、STEP2~STEP6については、ケースによって順番が前後することがあります。

STEP
新設分割計画の作成・承認

新設分割計画を作成し、社内承認を行います。
社内承認については、取締役会設置会社であれば取締役会の決議が必要となり、取締役会非設置会社であれば取締役の過半数の決定によることとなります。

【新設分割計画の法定記載事項について】
会社法763条に列挙されています。
①:新設会社の目的、商号、本店の所在地及び発行可能株式総数
②:①以外の新設会社の定款で定める事項
③:新設会社の設立時取締役の氏名
④:新設会社が監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)である場合は、設立時監査役の氏名
⑤:新設会社が新設分割により分割会社から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項
⑥:新設会社が新設分割に際して分割会社に対して交付するその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる当該新設会社の株式の数又はその数の算定方法並びに当該新設会社の資本金及び準備金の額に関する事項
⑦:分割会社が新設会社の成立の日に、全部取得条項付種類株式の取得(取得の対価が、原則新設会社の株式のみであるもの)や剰余金の配当(配当財産が、原則新設会社の株式のみであるもの)を行うときは、その旨。※⑦は、分割型分割を行う場合に記載が必要。

上記、「⑤」に関しては、新設分割計画書に別紙「承継権利義務明細表」に定めるとおりと記載のうえ、承継対象の権利義務の明細表を添付します。明細表の作成にあたり、種々雑多で数も多く、かつ日々変動する会社分割の対象をどのように定めるかは悩ましいところです。当事者間で利害対立が生じる可能性がほとんど無いケースでは、相当概括的な記載で済ませる場合も多くあります。なお、登記実務上、そのような概括的な記載であっても問題なく受理されます。

STEP
労働者異議申出手続き

分割会社は、法令で定める労働者に対して、新設分割計画承認株主総会の日の2週間前の日の前日(通知期限日)までに、次に掲げる事項を書面により通知しなければならないとされています。(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律2条)
※株主総会の決議による承認を要しないときは、新設分割計画が作成された日から起算して、2週間を経過する日が通知期限日となります。

【労働者の異議申出手続きの趣旨について】
会社分割について、会社法では分割契約等に記載することで会社分割の当事者たる会社の意思のみによって、承継される労働者の範囲を自由に決定できることとなっており、労働者が不測の不利益を被るおそれがあります。このため、会社分割に際して大きな利害関係を有する一定の範囲の労働者の意思を尊重して異議申出の権利を付与し、その異議の申出を行うかどうかの判断に必要かつ十分な情報を提供するため、本制度が設けられております。

本手続きについては、司法書士ではご対応が難しいため、弁護士または社労士の先生等へご確認をお願いしております。

STEP
事前開示

分割会社は、新設分割計画の内容、その他会社法施行規則で定める事項を記載した書面(事前開示書面)を作成し、本店に備え置かなければなりません。

【事前開示書面の作成の趣旨について】
事前開示書面の備え置きの趣旨としては、株主が新設分割計画の公正等を判断し、また会社債権者が新設分割計画に対し異議を述べるか否かを判断するための資料を提供するためとされています。

【事前開示書面の備え置き期間とその開始日】
備え置きの期間は、次に掲げる日のいずれか早い日から新設会社の成立の日後6か月を経過する日までになります。
■新設分割計画について承認を受ける株主総会の日の2週間前の日
※ただし、株主総会を会社法319条1項の定める「書面決議」で行う場合は、株主総会提案のあった日
■反対株主の株式買取請求に係る通知又は公告の日のいずれか早い日
■債権者異議手続きの公告又は催告の日のいずれか早い日
■前記以外の場合には、新設分割計画作成の日から2週間を経過した日

STEP
債権者異議手続き

分割会社の債権者のうち以下①・②の債権者は、新設分割について異議を述べることができます。
①:新設分割後の分割会社に対して債務の履行を請求できなくなる債権者
②:分割会社が分割対価として交付された新設会社の株式を、剰余金の配当等で株主に分配する場合における債権者(いわゆる、分割型分割を採用する場合は、分割会社の全債権者)
債権者異議申述期間としては、「1か月以上」と定められています。債権者異議手続きが終了していない場合には、新設分割による設立登記が出来ず、新設会社が成立しないため、新設会社の成立予定日の前日までには終了させておく必要があります。
分割会社は、下記に掲げる内容を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別に催告しなければなりません。なお、異議を述べることが出来る分割会社の債権者のうち、各別の催告を受けなかった債権者(ダブル公告を実施した場合は、分割会社の不法行為債権者に限る。)は、新設分割計画の定めにかかわらず、分割会社及び新設会社の双方に対して、債務の履行を請求できます。なお、分割会社に対しては、新設会社の成立の日に有していた財産の価額を限度として、また、新設会社に対しては、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができます。

【公告又は催告の内容について】
■新設分割をする旨
■新設会社の商号及び住所
■分割会社の計算書類に関する事項として、会社法施行規則で定めるもの
 ※公告又は催告時点のいずれか早い時点の最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容
 ※決算公告を行っている会社であれば、その決算公告の掲載場所の開示
■債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
 ※一定の期間は、1か月を下ることができません。

決算公告をしていない会社は、新設分割公告の際に貸借対照表の要旨を掲載する必要があります(同時公告)。その場合、官報の「号外」に掲載する必要があり、申込みから掲載まで約2週間の期間が必要となりますので、スケジューリングの際に注意が必要です。(官報の「本紙」での掲載の場合、申込みから掲載まで約1週間。)

【個別催告を省略できるケース】

債権者が多数いる場合における「ダブル公告」の選択について
債権者の数が多く、個別に催告書を送付することが現実的でない場合には、官報公告と併せて、定款で定めた公告方法(例:日刊新聞紙公告または電子公告)による公告を行うことで、個別催告書の送付を省略することができます。これが一般に「ダブル公告」と呼ばれる手法です。
なお、定款での公告方法が「官報」となっている会社については、官報公告だけではダブル公告の要件を満たしません。ダブル公告を採用するためには、事前に定款に定める公告方法を「日刊新聞紙」または「電子公告」に変更し、その変更登記を済ませておく必要があります。実務上は、新設分割手続きのスケジュールに定款変更に伴う手続きの期間を組み込むことを忘れないよう注意が必要です。
※なお、分割会社の不法行為により生じた債務の債権者に対しては、各別の催告を省略することはできません。

会社が把握している債権者がいない場合の対応
会社が確認できる範囲で債権者が存在しない場合には、個別催告は不要です。その場合、新設分割の登記申請時に「当社が把握する債権者は存在しないため、催告先はありませんでした。」といった趣旨の上申書を添付すれば、法務局は問題なく受理します。

債権者異議手続き自体を省略できるケース

承継される債務が一切ない場合
新設分割計画書の「承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項」の中に債務が含まれていなければ、債権者異議手続きは不要です。ただし、「分割型」新設分割の場合においては、債権者異議手続きを省略できません。

債務の承継方法として、併存的債務引受を採用する場合
新設会社が承継する債務について、分割会社が併存的債務引受をする場合には、官報公告等の債権者異議手続き自体を省略することができます。ただし、「分割型」新設分割の場合においては、併存的債務引受をしても、債権者異議手続きを省略できません。

債務の履行につき、分割会社が連帯保証することで、債権者異議手続きを省略することも可能ですが、登記手続きの添付書面として、「連帯保証契約書」の添付を要するものと考えられおり、手続負荷の観点で、「併存的債務引受」の方が利用価値があります。

STEP
株主への通知等

新設分割に反対する株主は、会社に対し、株主総会に先立って新設分割に反対する旨を通知し、かつ、株主総会において新設分割に反対したことを要件として、株式を公正な価格で買い取ることを請求することができます。
分割会社は、株主による株式買取請求権行使の機会を確保するため、新設分割計画承認株主総会決議の日から2週間以内に、株主に対し通知又は公告を行う必要があります。

【株主への通知等の内容】
■新設分割をする旨
■新設会社の商号及び住所

「株主総会の決議の日から2週間以内にしなければならない」という点において、当該規定は、手続の遅延を防止するため期限を設ける趣旨であるから、株主総会の決議後に通知等をする必要はなく、株主総会開催前に通知を発送することは差し支えないものとされています。なお、株主への通知は、株主総会招集通知書や株主総会提案書(会社法319条に基づく書面決議)に上記内容を併せて記載することで、対応可能です。

株主への通知等を省略できるケース
簡易新設分割の場合
簡易新設分割の場合においては、分割会社の株主に及ぼす影響が軽微であることから、反対株主の買取請求権がないだけでなく、株主への通知さえも不要とされています。

STEP
新設分割計画承認の株主総会決議

分割会社は、新設分割の効力発生日(設立会社の設立の登記がなされる日)の前までに、株主総会の決議(特別決議)によって、新設分割計画の承認を受けなければなりません。

【株主総会決議を省略できる場合】
■簡易新設分割
新設分割により設立会社に承継させる資産の帳簿価額の合計額が、分割会社の総資産額として、会社法施行規則で定める方法により算定される額の5分の1以下であれば、株主総会の決議を省略することができます。

簡易新設分割は、反対株主の株式買取請求権が認められず、また株主への通知も不要とされているなど、手続上の負担が比較的少ないことから、株主総会の開催が容易でない上場会社における会社分割において、実務上よく利用されています。

STEP
分割期日(効力発生日=新設会社の設立の登記がなされた日)

新設分割においては、新設会社の成立の日、すなわち新設会社の設立の登記がなされた日が新設分割の効力発生日となります。
設立会社は、その成立の日に、新設分割計画の定めにしたがい、分割会社の権利義務を承継します。

【会社法が定める新設分割の登記をすべき時期】

新設分割をした場合には、分割会社及び新設会社は、次に掲げる日のいずれか遅い日から2週間以内に、それぞれの本店所在地において、分割会社については、変更の登記をし、新設会社については設立の登記をしなければなりません。

①:新設分割計画承認株主総会の決議の日
②:反対株主の株式買取請求に係る通知又は公告をした日から20日を経過した日
③:債権者異議手続きの終了した日
④:新設分割をする会社が定めた日

【新設分割の効力発生と主務官庁の認可について】
例えば、下記のような業種に関する権利義務等を承継する場合は、新設分割の効力発生の要件として、主務官庁の認可を要しますので、事前に主務官庁との調整が必要となることに注意が必要です。
( 例 )
■一般貨物自動車運送事業
■第二種貨物利用運送事業
■港湾運送事業

STEP
事後開示

分割会社は、新設会社と共同して、新設会社の成立の日後遅滞なく、新設分割に関する事項として、会社法施行規則で定める事項を記載した書面を作成し、新設会社の成立の日から6か月間本店に備え置く必要があります。

実務上の留意点

新設分割の手続きを進める際に、その他実務上注意すべきポイントをまとめます。

分割型新設分割の会計処理に注意

分割型新設分割の場合には、例外的な会計処理として、会社計算規則50条(貸借対照表を二つに分割し、設立会社に株主資本を引き継がせる会計処理)を適用することも可能です。
もっとも、会社計算規則50条を適用した場合には、新設分割の手続とは別に、「減資」の手続も必要となるため、注意を要します。特に債権者異議手続の際の公告においては、新設分割公告の掲載だけでなく、減資公告についても併せて行うことが重要です。
なお、分割型新設分割の場合であっても、会社計算規則49条を適用することは可能であり、その場合には減資手続きを回避することができます。

(単独新設分割の場合における新設分割設立会社の株主資本等)
会社計算規則第49条 新設分割設立会社(二以上の会社が新設分割する場合における新設分割設立会社を除く。以下この条及び次条において同じ。)の設立時における株主資本等の総額は、新設型再編対象財産の新設分割会社における新設分割の直前の帳簿価額を基礎として算定する方法(当該新設型再編対象財産に時価を付すべき場合にあっては、新設型再編対価時価又は新設型再編対象財産の時価を基礎として算定する方法)に従い定まる額(次項において「株主資本等変動額」という。)とする。
2 前項の場合には、新設分割設立会社の資本金及び資本剰余金の額は、株主資本等変動額の範囲内で、新設分割会社が新設分割計画の定めに従いそれぞれ定めた額とし、利益剰余金の額は零とする。ただし、株主資本等変動額が零未満の場合には、当該株主資本等変動額をその他利益剰余金(新設分割設立会社が持分会社である場合にあっては、利益剰余金)の額とし、資本金、資本剰余金及び利益準備金の額は零とする。

(株主資本等を引き継ぐ場合における新設分割設立会社の株主資本等)
会社計算規則第50条 前条の規定にかかわらず、分割型新設分割の新設型再編対価の全部が新設分割設立会社の株式又は持分である場合であって、新設分割会社における新設分割の直前の株主資本等の全部又は一部を引き継ぐものとして計算することが適切であるときには、分割型新設分割により変動する新設分割会社の資本金、資本剰余金及び利益剰余金の額をそれぞれ新設分割設立会社の設立時の資本金、資本剰余金及び利益剰余金の額とすることができる。
2 前項の場合の新設分割会社における新設分割に際しての資本金、資本剰余金又は利益剰余金の額の変更に関しては、法第二編第五章第三節第二款の規定その他の法の規定に従うものとする。

分割会社と同一の商号・本店となる会社を設立する場合

分割会社と同一の商号、かつ同一の本店所在場所において、新設分割により会社を設立する場合には、商業登記法27条との関係で問題が生じるものと懸念されるところ、分割会社の商号を新設分割と同時に変更する場合には、商業登記法27条に抵触することはないと考えられ、実務上も法務局において受理されています。

(同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止)
商業登記法第27条 商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。

免責の登記

事業を譲り受けた会社(以下、「譲受会社」という。)が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負うとされています(会社法22条1項)。また、事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社がその本店の所在地において譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨を登記(=免責の登記)した場合には、適用しない。ともされております(会社法22条2項)。本条項は、事業譲渡だけではなく、会社分割の場合にも類推適用されるものと解されており、登記実務においても認められております。以下、免責の登記の登記記録(実際に受理されたものの一例となります。)となります。なお、登録免許税については、新設分割による設立の登記と免責の登記は別区分であることから、それぞれの税額の合計額を納付する必要があります。

【免責の登記の登記記録例】
「当会社は、令和●年●月●日新設分割により事業の承継を受けたが、分割会社である株式会社□□(新商号「株式会社△△」)の債務については、令和●年●月●日付新設分割計画書において当会社が承継するものとされた債務を除き、弁済する責任を負わない。」

会社分割と許認可の承継

会社分割によって事業を承継する場合、分割会社が取得していた許認可が承継会社に自動的に承継されるかどうかは、各許認可の根拠法令によって定められています。新設分割の場合は、新設分割による設立登記後に設立会社が設立されて初めて許認可の申請が可能となるため、事業の空白を生じさせないためには、事前に準備会社を設立し、許認可申請を先行させるなどの対応が必要となります(前もって新会社を設立し、その後吸収分割を行うケース)。なお、建設業においては、令和2年10月1日に施行された改正建設業法により、建設業許可の承継が可能となっている為、新設分割を利用した場合でも、事業の空白が生じないようになりました。ただし、主務官庁との事前協議が必要なため、早めの意思決定が必要となります。

新設分割に伴う不動産登記

新設分割の登記(商業登記)を行っただけでは、不動産の権利移転を第三者に対抗することはできません。各不動産について、所有権移転登記や根抵当権の移転・変更登記等を行うことにより、はじめて第三者に対抗できるようになります。

特に、分割会社が根抵当権者又は債務者として登記されている場合には、注意が必要です。

まず、元本確定前に、分割会社を根抵当権者とする新設分割が行われた場合、当該根抵当権は、法律上当然に、分割会社と新設会社の準共有となるとされています(民法398条の10第1項)。この場合、新設分割計画書において、当該根抵当権の帰属や被担保債権の範囲について、これと異なる定めがされていたとしても、実務上は、いったん根抵当権の一部移転登記を行ったうえで、その定めに合致するよう、改めて変更(移転)登記を行う必要があります。

また、元本確定前に、分割会社を債務者とする新設分割が行われた場合には、当該根抵当権は、法律上当然に、分割会社と新設会社の共用根抵当権となるとされています(民法398条の10第2項)この場合においても、新設分割計画書において、当該根抵当権の帰属や被担保債権の範囲について、これと異なる定め(例えば、新設会社のみがすべての債務を承継する旨の定め)がされていたとしても、まずは根抵当権の債務者変更登記を行い、共用根抵当権としたうえで、その定めに合致するよう、さらに変更登記を行うこととなります。

(根抵当権者又は債務者の会社分割)
民法第398条の10 元本の確定前に根抵当権者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債権のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に取得する債権を担保する。
2 元本の確定前にその債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債務のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に負担する債務を担保する。
3 前条第三項から第五項までの規定は、前二項の場合について準用する。

債権者異議手続に注意

新設分割公告に関しては、字句の誤り・記載事項の不足・掲載媒体の選択ミスなどがあると、手続きに重大な支障を生じる場合があります。特に、官報・日刊新聞紙・電子公告いずれの方式でも、掲載直前の訂正は原則として困難で、一度誤って掲載されてしまうと、訂正公告を行う必要が生じたりと、追加費用や日程の大幅な遅延につながります。その結果、当初予定していた新設分割の登記申請予定日に間に合わず、事業の継続や取引先との契約更新、決算対応等、関連業務に影響が出るケースもあります。
債権者保護手続きは新設分割の手続きの中でも特に失敗が許されない工程であるため、専門家(司法書士・弁護士等)の関与のもとで進めることを強く推奨いたします。

書類不備と法務局の審査

登記の申請においては、法務局による書類審査が非常に厳格です。提出書類に不備や不足があると、「補正(訂正や追加提出)の指示」が出されます。補正の通知が来た場合、内容によっては担当者が法務局に出向いて訂正対応をしなければならず、作業が長引くおそれがあります。登記申請前に添付書類や記載事項を十分チェックし、不明点があれば専門家に確認するなどして、一回の申請で受理されるよう万全を期しましょう。

司法書士が関与する場面とサポート内容

新設分割のような組織再編手続きでは、司法書士が各所で専門的なサポートを提供します。司法書士は会社法・商業登記実務のプロとして、契約から登記申請まで一連の流れを適切に進めるお手伝いをいたします。以下に、司法書士が関与する主な場面とそのサポート内容をまとめます。

事前相談・スケジュール策定

新設分割法務スキームを検討する段階で、司法書士が手続き全体の流れや必要なステップについてアドバイスします。新設分割計画の作成時期や公告のタイミング、株主総会等の各会議体の招集手順など、法定期限を踏まえたスケジュール策定を支援します。早期にご相談いただければ、効率的かつ抜け漏れのない計画作りが可能です。

書類の作成支援

新設分割に必要な書類一式の作成をサポートします。具体的には新設分割計画書のひな形作成や文案のリーガルチェック、株主総会等の各会議体の議事録作成、債権者異議手続きにおける公告掲載手配及び催告書の作成支援などです。司法書士は会社法及び商業登記の知識に基づき、書類に盛り込むべき事項を的確にアドバイスできます。特に議事録や計画書の記載内容に不備があると登記申請で補正を受ける原因となるため、プロの視点で事前に整えておくことが重要です。

登記申請の代理

新設分割の効力が生じるためには、所定の登記を行うことが必要です。これらの登記申請手続については、司法書士が代理して行うことができます。司法書士はご依頼を受け、法務局に提出する申請書類一式を作成・準備し、当事会社の代表者に代わって登記申請を行います。申請にあたっては、添付書類の漏れや形式上の不備がないかを入念に確認し、登記が円滑に受理・完了するよう対応します。また、万が一、法務局から補正の指示が出た場合であっても、司法書士が迅速に対応し、必要な書類の訂正や追加提出を行います。そのため、ご依頼者様は煩雑な手続に煩わされることなく、本業に専念していただくことができます。

関連手続きのフォロー

新設分割を実行するにあたり、必要に応じて関連する諸手続きのフォローを行います。例えば、新設分割に伴う許認可の承継手続きや社内規程の整備、取引先への通知などについて、提携する弁護士・税理士・行政書士等と連携してアドバイスすることも可能です。新設分割手続全般で不明な点があれば、お気軽にご相談ください。

  

司法書士に依頼するメリットは、会社法及び商業登記等の専門知識に基づく正確な手続きと安心感です。新設分割に伴う一連の法務手続きは、経営者の方にとって非常に煩雑で見慣れない作業が伴います。司法書士に任せれば、法務局の厳しい審査基準にも適合した書類作成・申請をスムーズに行えるため、時間と労力の節約になります。仮に自社で登記申請に挑戦しても、各種法令を調べる手間や法務局とのやり取りに追われて本業に支障が出ては本末転倒です。専門家である司法書士のサポートを受けることで、新設分割手続きを円滑に進め、過料のリスク回避や手続き漏れ防止につなげることができるでしょう。

司法書士法人川岸事務所では、これまでの豊富な実務経験を生かし、新設分割手続きを正確かつスムーズに進めるためのサポートを行っています。債権者異議手続・許認可の確認など、複雑なポイントも丁寧に対応いたしますので、初めての新設分割でも安心してお任せいただけます。どうぞお気軽にご相談ください。

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