司法書士が解説!資本金の額の減少(減資)の実務ポイント

目次

減資の目的

減資とは、会社の資本金又は準備金の額を減少させる手続です。
帳簿上の資本金又は準備金を減少させ、剰余金に振り替える行為であり、発行済株式数自体は原則変わりません。

減資を行う主な目的の例としては、下記の通りです。

■分配可能額の財源確保
⇒ 剰余金の配当や自己株式の取得による株主に対する会社財産の分配を可能にします。
■資本金の額を課税標準額とする税金の削減

⇒ 外形標準課税の適用対象法人(事業年度終了の日において資本金1億円超の法人)の回避等です。
※令和6年度税制改正により、外形標準課税の適用対象法人の制度に関する見直しがなされているため、税理士等の専門家への確認は必須です。
■欠損填補による財務健全化

⇒ 欠損が生じている場合に、資本金や準備金の額を減少させて、その減少額を剰余金に振り替えることで分配可能額のマイナスを解消し、財務体質を健全化します。
■大会社規制の不適用
⇒ 資本金の額を5億円未満に減少し、「会計監査人の設置義務」や「内部統制システム構築に関する基本方針の決定義務」等を回避する。

減資の法務手続きの流れ

減資の一般的な法務手続きの流れは次のとおりです。

STEP
社内承認(取締役会決議)

減資の具体案を策定し、株主総会の招集を決定します。

STEP
株主総会決議

資本金の額の減少を行う場合は、原則として、株主総会の特別決議によって、「会社法第447条に定める事項」を定めます。
準備金(資本準備金又は利益準備金)の額の減少の場合は、原則として、株主総会の普通決議によって、「会社法448条に定める事項」を定めます。
株主総会決議の日は、資本金又は準備金の額の減少の効力発生日と同一の日とすることも可能です。

【資本金の額の減少:会社法第447条に定める事項】
■減少する資本金の額
■減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額
■資本金の額の減少の効力発生日

【準備金の額の減少:会社法第448条に定める事項】
■減少する準備金の額
■減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とするときは、その旨及び資本金とする額
■準備金の額の減少の効力発生日

※減少する資本金又は準備金の額は、効力発生日における資本金又は準備金の額を超えてはなりません。

【決議要件を緩和できるケース】

■欠損(分配可能額がマイナス)が生じている場合(資本金減少による欠損てん補)
定時株主総会において、欠損の額(分配可能額のマイナスの額)を超えない範囲で、資本金の額を減少するときは、株主総会の「普通決議」を採用できます(会社法第309条2項9号)。

■株式の発行と同時に資本金等の額を減少する場合(リファイナンスによる株主資本の入替え)
株式の発行と同時に資本金又は準備金の額を減少する場合において、資本金又は準備金の減少の効力が生ずる日後の資本金又は準備金の額を下回らないときは、「取締役会の決議(取締役会非設置会社であれば、取締役の決定)」を採用できます(会社法第447条3項、会社法第448条3項)。
例えば,資本金の額を2000万円減少するが,同時に株式を発行した結果,資本金の額が2000万円以上増加するような場合がこれに該当します。

■会社法第459条1項に基づく定款の定めがある場合(準備金減少による欠損てん補)
会社法第459条に定める一定の条件を満たしている株式会社は、欠損(分配可能額がマイナス)が生じている場合に、株主総会の決議ではなく、計算書類承認(会社法第436条3項)の「取締役会の決議」によって、欠損の額(分配可能額のマイナスの額)を超えない範囲で、準備金の減少を行うことができます

資本金又は準備金の額の減少と併せて、株主への配当や繰越利益剰余金のマイナスの解消を行う場合は、別途剰余金の配当や損失処理の議案についても、株主総会に上程する必要があります。

【欠損填補】
マイナスの分配可能額(=欠損)を増加させ、分配可能額を回復させる行為。
【損失処理】
繰越利益剰余金がマイナスの場合に、他の剰余金の科目に計上されている額を「繰越利益剰余金」に振り替え、「繰越損失」を解消する行為。

STEP
債権者異議手続

減資を行う当該会社の債権者は、資本金又は準備金の減少について異議を述べることができます。
債権者異議申述期間としては、「1か月以上」と定められています。債権者異議手続きが終了していない場合には、資本金又は準備金の減少の効力が発生しないため、資本金又は準備金の減少の効力発生日の前日までには終了させておく必要があります。

【債権者異議手続と資本金の額の減少決議との先後関係について】
資本金の額の減少の決議(株主総会の決議)より先に債権者異議手続を開始することも可能であるとされています。

債権者異議手続においては、官報公告の掲載や催告書の発送によって、外部に情報を開示することとなる為、特に減資のようなイメージとしてネガティブな手続きにおいては、レピュテーションリスクが懸念されます。スケジュールがタイトであれば、債権者異議手続を先行して行うことも一考ですが、出来る限り、適切な社内承認(取締役会決議等)を経た後に、債権者異議手続を実施した方がよいものと考えます。


当該会社は、下記に掲げる内容を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別に催告しなければなりません。

【公告又は催告の内容について】
■資本金又は準備金の額の減少の内容

※資本金の額の減少の場合、一部でも資本準備金に計上する場合は、その旨及びその額を記載する必要があります。
■当該会社の計算書類に関する事項として、会社法施行規則で定めるもの
※公告又は催告時点のいずれか早い時点の最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容
※決算公告を行っている会社であれば、その決算公告の掲載場所の開示
■債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
※一定の期間は、1か月を下ることができません。

決算公告をしていない会社は、減資公告の際に貸借対照表の要旨を掲載する必要があります(同時公告)。その場合、官報の「号外」に掲載する必要があり、申込みから掲載まで約2週間の期間が必要となりますので、スケジューリングの際に注意が必要です。(官報の「本紙」での掲載の場合、申込みから掲載まで約1週間。)

上記の内容のほかに、「株主総会決議の日」、「効力発生日」、「減少後の資本金の額又は準備金の額」を公告に掲載するケースも散見されますが、誤字・脱字等のミスを防ぐことや外部への開示事項を極力削減すること等の観点から、法令上、最低限の要件を満たす内容とした方がよいものと考えます。

【個別催告を省略できるケース】

債権者が多数いる場合における「ダブル公告」の選択について
債権者数が多く、個別に催告書を送付することが現実的でない場合には、官報公告と併せて、定款で定めた公告方法(例:日刊新聞紙公告または電子公告)による公告を行うことで、個別催告書の送付を省略することができます。これが一般に「ダブル公告」と呼ばれる手法です。
なお、定款での公告方法が「官報」となっている会社については、官報公告だけではダブル公告の要件を満たしません。ダブル公告を採用するためには、事前に定款に定める公告方法を「日刊新聞紙」または「電子公告」に変更し、その変更登記を済ませておく必要があります。実務において、減資手続きのスケジュールに定款変更に伴う手続きの期間を組み込むことを忘れないよう注意が必要です。

会社が把握している債権者がいない場合の対応
会社が確認できる範囲で債権者が存在しない場合には、個別催告は不要です。その場合、資本金の額の変更の登記申請時に「当社が把握する債権者は存在しないため、催告先はありませんでした。」といった趣旨の上申書を添付すれば、法務局は問題なく受理します。

【債権者異議手続自体を省略できるケース】

■準備金の資本金への組入れ
準備金の額を減少する場合において、減少する準備金の額の全部を資本金とする場合(会社法第449条1項)。

■欠損のてん補のための準備金の額の減少
欠損が生じている場合、すなわち、分配可能額がマイナスとなっている場合に、定時株主総会において(会社法第459条1項の定款の定めがある場合には、決算確定のための取締役会を含む。)、欠損の額(分配可能額のマイナスの額)を超えない範囲で準備金の額の減少の決議をする場合(会社法第449条1項但書)。

STEP
効力発生日

資本金又は準備金の額の減少は、株主総会決議(又は取締役会決議)で定めた効力発生日にその効力を生じます。ただし、効力発生日の時点で、債権者異議手続が終了していないときは、資本金又は準備金の額の減少の効力は生じません。

【効力発生日を変更する場合】
効力発生日の変更は、株主総会決議(又は取締役会決議)で定めた効力発生日の前であれば、いつでも可能です。この変更の決定については、登記手続き上、会社法第348条2項又は会社法第362条2項1号の業務執行の決定に該当するとされており、取締役の過半数の決定や取締役会決議を要するものとされています。また、効力発生日の変更公告についても、法令上、明文化されておらず、不要とされております(この点、吸収合併等の組織再編の場合と異なります。)。

STEP
法務局への登記申請

減資の効力発生日から「2週間以内」に、当該会社の本店所在地を管轄する法務局において、資本金の額の変更の登記を申請する必要があります。一方、準備金の額については、登記事項ではありませんので、準備金の額の減少については、登記は不要です。ただし、減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とするときは、資本金の額の変更の登記が必要となります。

実務上の留意点

減資の手続きを進める際に、その他実務上注意すべきポイントをまとめます。

十分なスケジュール計画

減資は思い立って、すぐに完了できるものではありません。
法務手続きの観点だけでも、社内承認から効力発生までは最短でも約2か月を要することが一般的です。
株主総会や取締役会等の各会議体の招集、債権者異議手続等の各手続きにおいて、法定の期間があるため、余裕をもってスケジュールを組み、各手続きに漏れがないよう計画しましょう。
手続きに瑕疵があると減資が無効となる可能性もありますので、焦らず慎重に進めることが重要です。

損失処理の際の会計処理に注意

損失処理とは、「繰越利益剰余金がマイナスの場合に、他の剰余金の科目に計上されている額を「繰越利益剰余金」に振り替え、「繰越損失」を解消する行為」です。一方、企業会計基準第 1 号(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準)によると、原則として、「資本剰余金の各項目は、利益剰余金の各項目と混同してはならない。したがって、資本剰余金の利益剰余金への振替は原則として認められない。」とされていますが、「利益剰余金が負の残高のときにその他資本剰余金で補てんするのは、資本剰余金と利益剰余金の混同にはあたらないと考えられる。」ともされております。利益剰余金とは、「利益準備金+その他利益剰余金」のことであり、利益準備金にプラスの残高がある場合は、その他利益剰余金のマイナスの額の全額について、その他資本剰余金から振り替えることができないことに注意を要します。

登記申請の期限厳守

減資の効力発生日から2週間以内に登記申請を行うことは法律上の義務です(会社法第915条)。
この期限を過ぎてしまうと、100万円以下の過料に処される可能性があります(会社法第976条)。
会社法にもとづく登記申請期限を厳守するため、しっかりと準備を行ったうえで、登記申請手続きを進めましょう。

債権者異議手続きと許認可に注意

減資公告に関しては、字句の誤り・記載事項の不足・掲載媒体の選択ミスなどがあると、手続きに重大な支障を生じる場合があります。特に、官報・日刊新聞紙・電子公告いずれの方式でも、掲載直前の訂正は原則として困難で、一度誤って掲載されてしまうと、訂正公告を行う必要が生じたりと、追加費用や日程の大幅な遅延につながります。その結果、当初予定していた減資の効力発生日に間に合わず、株主への配当や事業の継続等に影響が出るケースもあります。
債権者保護手続きは減資の手続きの中でも特に失敗が許されない工程であるため、専門家(司法書士・弁護士等)の関与のもとで進めることを強く推奨いたします。

また、銀行業など、主務官庁の減資の認可が必要とされている事業については、主務官庁との事前協議が不可欠です(銀行法第5条)。この場合、上記の2か月という期間より、さらに長い準備期間を要することが一般的です。減資の認可申請に必要な書類の事前確認や、管轄官庁との調整に時間を要するため、減資の準備は計画的に進めることが重要です。

募集株式の発行と同時に資本金の額を減少する場合

官報公告において、同時増資型である旨は任意記載ですが、実務上は記載する例が多いです。例えば、「当社は、募集株式の発行により資本金及び資本準備金の額が増加することを条件として、」や「ただし、同時に株式の発行により増額いたしますので、効力発生日後の資本金の額は同日前を下回ることはありません。」のような文言を加えます。増資を条件としたうえで、当該増資額を全額減資する場合において、減資額を明記しない内容の公告も実務上散見されますが、事前に管轄法務局に照会の上、実行することをおすすめします。
また、会社法447条3項や会社法448条3項の要件に該当する場合であっても、登記実務上、会社法447条1項や会社法448条1項の原則どおり、定款の定めなくして、株主総会で決議することができるとされています。

書類不備と法務局の審査

登記の申請においては、法務局による書類審査が非常に厳格です。提出書類に不備や不足があると、「補正(訂正や追加提出)の指示」が出されます。補正の通知が来た場合、内容によっては担当者が法務局に出向いて訂正対応をしなければならず、作業が長引くおそれがあります。登記申請前に添付書類や記載事項を十分チェックし、不明点があれば専門家に確認するなどして、一回の申請で受理されるよう万全を期しましょう。

司法書士が提供できるサポート範囲

減資のように法務・税務が交錯する手続では、専門家の支援が成功の鍵となります。
司法書士は会社法・商業登記のプロフェッショナルとして、以下のような実務サポートが可能です。

事前相談・スケジュール策定

減資額や目的に応じた手続き全体の見通しを説明し、各会議体における手続きから登記完了までのスケジュール作成を支援します。特に債権者異議手続や各会議体の運営・決議事項等の点で、事前に適切な段取りをアドバイスします。

書類の作成・チェック

株主総会招集通知や議事録(減資の手続きに付随する各議案の文案作成)、債権者向けの催告書、官報公告原稿、登記申請書など必要書類一式を代行作成します。法定記載事項を正確に押さえた文案で、手続きミスを防ぎます。また会社様で自作した書類のリーガルチェックも可能です。

法務局への登記申請代理

減資に伴う資本金の額の変更登記申請手続きを司法書士が代理し、法務局とやり取りいたします。添付書面の適合性を確認し、不備があれば迅速に補正対応します。登記実務を一括代行するため、企業法務担当者の手間を大きく軽減できます。

関連手続のフォロー

減資に付随して必要となる他の登記(例:公告方法の変更や増資に伴う発行済株式の総数の変更登記等)があれば同時に処理し、手続きを一元管理します。必要に応じ税理士・弁護士とも連携し、減資の税務面や法的リスク面のフォローも行います。

このように司法書士は書類面・手続面の実務代行者として減資のプロジェクトを円滑に進める役割を担えます。特に債権者異議手続の遂行や期限管理、登記完了までの一連の流れに熟知しているため、減資に不慣れな企業であっても安心してお任せいただくことができます。企業法務担当者にとっては、専門家の知見を活用することで社内リソースを本業に集中させつつ、重要な資本戦略をミスなく実現できるメリットがあります。減資を検討する際は以上のポイントを踏まえ、目的と手続計画を明確にした上で司法書士や顧問税理士と協議しながら進めることを強くお勧めします。事前準備を怠らず適切な専門サポートを受ければ、減資は企業にとって財務改善・資本最適化の有効な手段となるでしょう。

司法書士法人川岸事務所では、これまでの豊富な実務経験を生かし、減資の手続きを正確かつスムーズに進めるためのサポートを行っています。各会議体で決議する議案の記載内容や債権者異議手続など、複雑なポイントも丁寧に対応いたしますので、初めての減資でも安心してお任せいただけます。どうぞお気軽にご相談ください。

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